令和6年(2024年)能登地震により被災された皆様、避難生活をされている皆様に心よりお見舞い申し上げます。
皆さまの安全と被災地の一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
●6月3日早朝、緊急地震速報がありました。
この能登半島の地震は暫定値でマグニチュード5.9と報告されていますが、この地震は想定される最大余震(マグニチュード6.6程度)と比較してそのエネルギーは10分の1程度でした。6月3日の2つの地震は普通の余震で、最大余震ではないと考えます。 今後、さらなる大きな余震が発生する事が地震学的に考えられます。(2024.6.3)
現在、複数の研究機関で能登半島地震の余震を解析したところ、震央の西側の領域で、明らかに期待される余震数より、余震発生が減っている事がわかりました。 このことは、「DuMA理論」、即ち、“嵐の前の静けさ”からすると、近い内に、震央の西側、即ち、能登半島で最大余震が発生することが否定できないと云う可能性を示唆しています。ちなみに想定される最大余震はマグニチ ュード6.5前後と推察されます。DuMA NL (2024.2.5で最新詳細)
右の図が現在能登半島で起きている事です。ETAS モデルによる余震発 生数の予測カーブ(赤点線)より、1月 8日ごろから明らかに下方にズレが生 じています(理論的に発生が予想され る余震より有意に数が少ない)。つまり DuMA が予測に用いている地震活動 静穏化が ETAS モデルによる解析でも 発生しているのです(相対的静穏化)。
地震活動解析で世界的に認められている手法に ETAS モデルというものがあります。これは統 計数理研究所に在籍されていた尾形良彦先生が開発されたモデルです。ETAS モデルとは Epidemic Type After shock Sequence Model の略称で、伝染性余震モデル、疫学的余震モデルとも言われてい ます。ETAS モデルは断層内の微弱な応力変化も精度よく見ることができ、地震活動の予測にきわめて 有効と考えられており、地震活動の標準モデルとして国際的に受け入れられれているモデルです。
*) DuMAは、濃尾地震のMw推定値をMw=7.5としました(2024.1.10)
**) 2007年西側は、既に破壊済みー> 西側の破壊のリスクも依然あると修正いたします(2024.1.14)
DuMA NL (2024.01.15で最新詳細)
※) DuMA CSO,週刊現代の取材を受けました
(前編)~次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」~記事は、西側の破壊のリスクも依然あると修正されていません。
(後編)~日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》
DuMA ニュースレター 号外2号 2024年1月6日 → 2024.01.10修正
1月1日16時10分に能登半島先端付近を震源とする最大震度7を観測する地震が発生しました。 続報・能登半島地震 : 珠洲市や輪島市ではまだ多くの行方不明者との報道もあり、極めて憂慮すべき状態かと思います。 1日にマグニチュード7.6の地震が発生してからの余震発生状況から、今言える事を報告させて頂きます。
これまでの状況から今後3地点①②③で地震発生の可能性が高まっていると推察されます。(2024.01.10)
一つは、今回の震源断層の北東側(佐渡島側)①で、これは地震学の常識として、地震が発生した領域(断層セグメントとも言います)では、歪は基本的に解消される方向に変化します。ところが、セグメントに隣接する地域は、1月1日の地震が発生した事により、逆に歪の蓄積が加速され るのです。
これは、東北地方沖でも同じ事が言え、2011年の東日本大震災(3.11)では、おおよそ茨城県沖から 岩手県沖の部分で断層(プレート境界)が破壊しました。しかし地球(地殻)はつながっていますので、 当然の事ながら3.11の時に破壊しなかった千葉県沖や青森県沖では、逆に歪が増加したと考えられています。つまり、東北地方太平洋沖では、青森県沖や千葉県沖で大規模な地震発生の可能性が高ま った状態となっています。これと同じ位置関係となるのが、1月1日の能登半島地震では佐渡島側なの です。今後 DuMAではこの地域の地震活動を監視していく所存です。 それに対し、南西側(西側)③ は、2007年3月25日にやはり能登半島地震と命名されたマグニチュード 6.9の地震が発生しており、歪は解放されていると推測されます。--> 歪が解放されたと考えるのが常識です。ところが、すでに「割れた」はずの場所で明らかに活発な地震活動が続いている。2007年に“割れた”部分でも再び激しい地震活動が発生している。(2024.01.15NL)
もう1ヶ所②、余震の空間分布から穴水町を中心とした地域で、余震がほとんど発生していない事が見て取れます。こちらは局所的に地震活動の空白域となっています。 下の図の左側は 2007年1月から 2018年12月に発生した地震(M≧1.5)の震央です。この図には 「この隙間(空白域)に注目!」というコメントの先の矢印の地域で地震活動が抜けている事がわかりま す。
その後、まさにこの空白域を埋めるように 2020年3月13日に M5.5 の地震が発生し、震度5強を輪島市で観測しました(下の右側の図)
このマグニチュード5.5の地震はこの程度大きさの空白域を破壊しました。1月1日の地震はマグニチ ュード7.6と報告されており、そのエネルギーは M5.5 の地震のおよそ1,500倍にも達するのです。いかに1日の地震の規模がケタ違いに大きかったがわかります。
1月8日のニュースレターでは、最新の全国陸域の地下天気図®
と首都圏の状況に変化があったかな かったかについて、報告する予定です。
*) DuMAは、濃尾地震のMw推定値をMw=7.5としました(2024.1.10) **) 過去観測史上最大の内陸地震であった濃尾地震(1891年推定Mw7.5)の余震は130年以上経過していますが、微小な余震は続いています。東日本大震災の余震活動は数十年~100年以上続きます。もちろん余震の発生数は確かに低下しています。今回の濃尾地震同等クラスの令和能登半島地震(この場所で3〜4千年に1度と言われている)は巨大が故に余震活動は数十年~100年以上続くと予想されます。
DuMA ニュースレター 号外 2024年1月1日
1月1日16時10分に能登半島先端付近を震源とする最大震度7を観測する地震が発生しました。
地震のマグニチュードは、気象庁の速報値で7.6と報告されています。次の図は1800年から2023年末までの224年の間に発生したマグニチュード7.6以上の地震をすべて図示したものです。
陸域近傍で発生した地震としては、1891年の濃尾地震に同等規模の地震で、内陸地震としては最大級のものです。上の図は過去200年以上の間、能登半島周辺でこの規模の地震が発生していなかった事を示しています。図示された地震はいずれも大きな被害を伴った有名な地震である事がわかります。
DuMAでは、2023年5月8日のニュースレターで、2023年5月5日の地震発生後、能登半島における地震空白域の存在を指摘しており、「将来M7クラスの地震発生が予想される領域」として注意を喚起していました。 *) DuMAは、濃尾地震のMw推定値をMw=7.5としました(2024.1.10)
1月1日の地震はこの空白域のすぐ東側を震源(破壊開始点)とする地震であった事がわかりました。米国地質調査所(USGS)の解析では、DuMAが地震空白域と指摘していた地域で最も地下での断層運動が激しかったようです。
https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000m0xl/finite-fault 右図に、このUSGSによる解析結果をお示しします。色の濃いところが大きくスリップした領域となっています。
次にお示ししますのが、昨年5月8日のニュースレターに掲載した図です。まだ指摘した地震活動空白域の歪を完全に解放していない可能性があり、もう少し注意が必要な状況と考えます。
★ 能登半島地震に関連した DuMA ニュースレター(NL)、DuMA地下天気図®ダッシュボード、地下天気図®のアーカイブ、NLバックナンバーを再掲載します。
◆ 地震活動度の静穏化異常はじまる。
● 能登半島に地震活動度の静穏化異常が確認されたのでDuMA地下天気図®ダッシュボードの能登半島地方に静穏化異常・警戒度 Lowで掲載。
地域(H) (2020/2/10)
現在の状況は L タイプ、M タイプ共通で異常が出ている能登半島周辺での静穏化異常が新たに発生し、進行中だと考えています。 地域(H) (2020/2/10)
● DuMA地下天気図®ダッシュボードの能登半島地方に静穏化異常・警戒を解除(2021/2/1)
これまで「能登半島周辺および北陸地方」として掲載しておりました静穏化異常(H)はやはり上高地周辺で の激しい群発異常により歪が開放された可能性が高いと考え、今回警戒解除といたしました。
地域(H) (2021/2/1)
◆ 地震活動度の活性化異常はじまる。
● DuMA地下天気図®ダッシュボードの能登半島地方に地震活動の活性化異常・警戒度 Highで掲載。 地域(S) (2021/11/15)
11月15日時点の DuMA ダッシュボードです。
能登半島周辺に地震活動の活性化異常を加えました。地域(S) (2021/11/15)
● 2023年5月5日に能登半島地方でM6.3の地震が発生。左図は5月5日前(3月27日)のDuMA地下天気図®ダッシュボードです。
地震活動の活性化異常・警戒度 Highで掲載。地域(S) (2023/3/27)
● 2023年5月5日にMj6.3地震起きたが、活発化の異常の警戒を解除しなかった。 6月5日のDuMA地下天気図®ダッシュボードです。
・5月5日午後2時42分頃、石川県能登地方を震源とするマグニチュード6.3の地震が発生し、石川県で最大震度6強を観測。DuMAダッシュボードに掲載の(S)エリアで発生。この地震の震源の西側にまだ破壊していない地域(未破壊の領域)があり、この地震そのものはこれが本震ですが、西側でM7クラスが誘発される可能性があります。(下図)ご注意下さい。(2023.5.8NL)
● 2024年1月1日にMw7.5の地震が起きる前の2023年12月18日のDuMA地下天気図®ダッシュボードです。 地震活動の活性化異常・警戒度 Highで掲載。地域(S)
上記の様に2021年10月ごろよりDuMA地下天気図®ダッシュボードに能登半島地方(地域S)に地震活動の活性化異常・警戒度 Highで掲載してきました。
● 左図は、2023年2月26日から2024年1月
4日までのDuMA地下天気図®(日本列島陸域:L-Type)の動画履歴です。
赤のエリアが、地震活動の活性化異常
青のエリアが、地震活動の静穏化異常
● 地下天気図® RTM時間変化曲線@能登半島
(珠洲市付近)(2014.1.1〜2024.1.4)
地震活動の活性化異常 2023年中旬頃より
始まる。
● 地下天気図® RTM時間変化曲線@佐渡島
(中部付近)(2014.1.1〜2024.1.4)
地震活動の活性化異常 2024年から始まる。
● 能登半島地震に関連したDuMA ニュースレター(NL)、のアーカイブ、NLバックナンバーを再掲載します。
DuMA ニュースレター2020年3月16日
能登半島で震度5強を観測する地震が発生
2020年3月13日午前2時18分ごろ、能登半島の輪島市で震度5強を観測する地震が発生しました。
震源は能登半島西部で暫定マグニチュードは5.5と報告されています。この地域では1993年に能登半島沖でM6.6の地震が発生し、さらに2007年3月には今回の震源の西南西でM6.9というかなりの規模の地震が発生し、死者1名、負傷者350名以上を記録しました。ちなみにこの2007年の地震で石川県では初めて震度6強を観測しました。
13日未明に発生した地震は、この2007年の地震の余震域の東側で発生したもので(図中に青色の点で震央を示してあります)、最も単純な解釈はこの地震の余震というものです。しかし問題は1993年の地震と2007年の地震の間には、割れ残りの領域が存在しているのです(図中の青色の□で囲んだ
領域)。 もしこの領域が一度に割れるとマグニチュード7程度の地震が発生する可能性が残されています。
地学的な時間スケールでは、将来この青四角で示した空白領域を埋めるようにM7クラスの地震が発生する事は確実なのですが、この『時間』とは10年ないし数十年、時には100年単位というもので、半年以内とか数年以内といった時間スケールで発生した事はほとんどありません。 極めて稀な例ですが、一週間ほどの間に隣接地域で発生した例としては、慶長伊予地震、慶長豊後地震、慶長伏見地震というものがあります(1596年)。ちなみに慶長伏見地震では伏見城の天守閣や二の丸が倒壊しています。
現在同様な状況と考えられるのが、2005年の福岡県西方沖地震を発生した警固断層の南東延長(福岡市がまさにその地域に入っている)や、2016年の熊本地震の南西側(布田川断層)なのです。
3月13日の能登半島の地震の位置付け
今後の推移ですが、3月9日のニュースレターでお知らせしたDuMAダッシュボードでも、能登半島周辺で地震活動静穏化異常が出現中であった事に触れています。今後、
1)2007年の地震の余震であり、活動はこれで収束、
2)地下天気図®ではダッシュボードに示すようにまだ静穏化の異常が続いているので、さらなる地震活動が発生する、という可能性が考えられます。
観測事実として、地下天気図®の静穏化領域の広がりから、前出の図の青色の四角で示した空白域ではなく、石川県、富山県の広い領域でもう少し注意が必要と考えています。 日本列島陸域の地下天気図®
2月10日のニュースレターに引き続き、日本列島の陸域に特化した地下天気図®解析です。3月13日時点のLタイプとMタイプの2種類の地下天気図®をお示しします。
次にお示しするのがLタイプとMタイプの地下天気図®です。
重要なのは、LタイプとMタイプの双方で静穏化異常が出現している事です。Mタイプは静穏化異常の検出感度は高いのですが狼少年になりやすいアルゴリズムとも言えます。
少なくとも3月13日の時点では、能登半島周辺地域の静穏化の異常は継続中である事がわかりました。
DuMAニュースレター 2021年7月19日 能登半島でややまとまった地震活動
気象庁は、平均して一日あたり600個程度の地震を日本列島およびその周辺で観測しています。もちろんそのほとんどは体に感じない小さな地震ですが、今年になってから、能登半島先端近傍でかなり地震活動が活発化しています。
能登半島およびその周辺では、1993年2月に能登半島沖地震(M=6.6)
左の図は上の図中の小さな四角の中で地震がどのような時系列で発生したかを図示した図です。 2007年3月には能登半島地震(M=6.9)と活断層タイプの被害地震が発生しています。
能登半島先端地域では、歴史時代を含めてマグニチュード6.5を超える地震は発生しておらず、将来的には、能登半島の先端地域を埋めるように内陸被害地震が発生する可能性が存在します。 2021年になってから、非常に多くの地震が発生している事がわかります。
左の図は1990年以降のマグニチュード5.1以上の地震の分布図です。赤枠で囲った地震が1993年の能登半島沖地震と2007年の能登半島地震です。能登半島先端は、歴史的にも地震の空白域となっている事がわかっています。
DuMA ニュースレター2021年9月20日
能登半島で震度5弱の地震が発生
2021年9月16日、能登半島先端の珠洲市周辺でマグニチュード5.1の地震が発生し、最大震度5弱を観測しました。
幸いこの地震での被害は報告されませんでした。これは日本の住宅を含めたインフラストラクチャーが外国に比べていかに頑健である事を改めて示したものと思われます。
能登半島では特に今年になって、珠洲市周辺で群発的な地震活動が続いています。 能登半島周辺では1993年に珠洲市の沖合でマグニチュード6.6の能登半島沖地震が発生し、その後2007年には能登半島の西方沖を震源とする能登半島地震(マグニチュード6.9)が発生しています。
今回の群発地震は1993年の地震に隣接する地域で発生しています。現時点で最も危惧しますのは、今回の群発地震の領域の西側にはマグニチュード6後半から7クラスの地震が発生する可能性のある地震活動のギャップ(空白域)が存在している事です。
この地域には地表には明瞭な活断層は同定されておりませんが、地下には未知の活断層が存在する可能性が高く、このギャップを埋めるような規模の地震が将来発生する可能性は極めて高いと考えられます。 さらに地震学を専門とする金沢大・平松教授や、先週号でも取り上げました京都大・西村准教授は
「能登半島で地殻の隆起が観測されている」とコメントされています。それでは実際の地殻変動データを見てみましょう。 左の図は、国土地理院のGEONET(GNSS連続観測システム)による地殻変動データを中部大学・井筒潤准教授が可視化したものです。
2020年ごろから珠洲観測点が隆起しているように見えます。この隆起は実は能登半島周辺のかなり広い範囲でも見る事が出来るようです。ちなみに能登半島での地震活動については、7月19日のニュースレターでも触れておりますので、併せてご覧頂ければ幸いです。
DuMA ニュースレター 2022年6月27日
能登半島で震度6弱
2022年6月19日、能登半島・珠洲で震度6弱を観測する地震が発生しました。さらに20日にも震度5強を観測する地震が発生しています。能登半島の地震活動活性化はDuMAでも何度もお伝えしてきましたが、まだ活動は続きますし、さらに大きな地震が発生する可能性が残されています。
能登半島近傍では、1993年に能登半島沖地震(M=6.6)、2007年に能登半島地震(M=6.9)が発生しています。今回の群発地震は1993年の能登半島沖地震の余震域のすぐ西側で発生しているようです。問題は2007年の能登半島地震と今回の群発地震活動の間に、まだ地震が発生していない領域(空白域←割れ残り)が存在している事です。
この付近には、地表には明瞭な活断層というものは確認されていないのですが、これまでの地震活動を勘案すれば、能登半島の北部には潜在活断層が存在しているのは確実だと思われます。
左のグラフは珠洲市におけるRTM時間変化曲線です。地震活動は消長を繰り返しつつ、現在非常に活発な状態である事がわかります。
DuMA ニュースレター 2022年7月4日
能登半島の群発地震の意味するもの ~日本海側の火山について~
日本海側にはほとんど火山は存在しません。その例外が秋田県・男鹿半島の一ノ目潟(二ノ目潟、三ノ目潟を含む)と島根県の隠岐の島です。ただ、それらが噴火した年代は異なり、一ノ目潟はいくつかの説がありますが、秋田県のウエブサイトでは8~11万年前に形成されたとなっており、マール(爆裂火口)の典型と言われています。また、一ノ目潟は安山岩中にマントル起源の捕獲岩を含んだ噴出物のある火山として知られています。マントル物質の研究にとって、極めて重要な火山で、世界的中のマントル物質の研究者から注目されている火山です。
隠岐の島は、やはり火山なのですが、一ノ目潟より古く、今から600万年ほど前から活動を開始し、50万年ほど前には活動を休止した火山です。隠岐の島火山も一ノ目潟と同様に、マントル物質を含む岩石が地表にもたらされている貴重な場所として知られています(捕獲岩、マントルゼノリスとも言う)。捕獲岩は、地球内部のことを教えてくれる地球からの手紙とも言われているのです。
2600万年前〜600万年前:新生代 − 古第三紀〜新第三紀
深い海の底にあった隠岐は、プレートの活動によって徐々に隆起を始め、約600万年前、島前と島後で起きた二つの激しいアルカリ火山岩の活動によって、いまの島の原型が造り出されました。島前3島は中央に高い山があり、その山が海に囲まれ、さらに外側に島がならぶ特徴的な姿をしています。この地形は「カルデラ」とよばれる、大規模な火山噴火によって生まれた火山性の陥没地形
ちなみに佐渡ヶ島は火山とは分類されていません。佐渡は金山で有名ですが、これは海底での熱水活動により形成されたものです。熱水鉱床が形成されたのは1,500万年ほど前の中新世と呼ばれる地質時代で、当時は日本海が存在していませんでした。つまり日本列島が中国大陸に隣接していた時代からその付近に位置しており、大陸の”かけら”と考えられています。 能登半島では、ここ数年隆起が確認されており、京都大学の西村卓也博士は、GPS地殻変動観測から、震源周辺の地下10~15キロの地殻が膨らんでいる事を突き止めており、マントル深くから上昇してきた”水”が原因ではないかと考えています。
それでは、なぜ深くから”水”が上昇してきたのでしょうか。現在の状態は、いわゆる”水噴火”の直前とも呼べるものだと考えています。
”水噴火”の代表例としては、1965年からおよそ5年半つづいた長野県の松代群発地震です。松代群発地震では、最盛期には有感地震が一日に600個近くになった事もあり、DuMA/CSOも当時小学生ながら、強烈に記憶に残っており、CSOが地震に興味を持つきっかけとなった出来事だったと思います。
DuMAでは、現在の能登半島の地震は、水噴火あるいは地下深くのマグマにより熱水が上昇して、現在の隆起を引き起こしている可能性が高いと考えています。そして今から1,000年後には、能登半島に立派な火山が出現している可能性すら存在すると考えています。同様に長野県松代付近にも1,000年後には火山が出現しているかもしれません。
DuMA ニュースレター 2023年5月8日 能登半島で震度6強を観測する地震が発生
2023年5月5日、能登半島先端の珠洲市で震度6強を観測する地震が発生しました。
当初、マグニチュード (M)は 6.3 と発表されましたが、現在は 6.5 に修正されています。6日正午の段階で、死者1名、負傷者 27名と報告されています。
能登半島先端地域では、2020 年 12 月頃から地震活動が活発化しており、2022 年 6 月 19 日には最 大震度6弱を観測した地震も発生しています(M5.4)。体に感じない小さな地震(マグニチュード1以上) は、これまでに 14,000 個以上発生しており、極めて激しい群発地震活動が続いています。
国の地震予知研究でも、各種観測を集中的に実施しており、能登半島先端地域では地殻が隆起して いる事もわかっています。さらに電磁気学的な構造探査から、この隆起には流体(多分地殻深部からの 地下水)が関与している事もわかってきました。
このような“水”が関与した群発地震の例として、最も顕著なものは、1965年8月から5年半続いた松 代群発地震(長野県)だと思います。松代群発地震は、地震発光現象がきちんと写真として撮影されて いる事でも知られています。 https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/matsushiro/mat50/disaster/luminous.html 能登半島周辺では、ここ300年ほどの間に3個の顕著な被害地震が発生していました。
それらは以下 に示す地震です。
1729 年 能登・佐渡地震(亨保能登地震, M6.6-7.0)
現在の輪島市東部や能登半島先端で大きな被害とされている。
1993 年 能登半島沖地震(M6.6)
沖合で発生したため、幸い死者は出なかった。
負傷者 30 名、全壊家屋1棟。
2007 年3月25日 能登半島地震(M6.9)
死者1名、負傷者 356名を数えた。 1729 年, 1993 年, 2007 年の地震の震央と
2023年5月5日の地震の震央
2007 年3月25日 能登半島地震(M6.9)では,地震発生1年近く前から地震活動度の静穏化異常が発生していた.静穏化異常が解消されつつある時の3月25日に地震が発生していたことが、後の解析で判明していた。
能登半島で今後最も危惧される事
能登半島北部には、今回の群発地震活動の領域と2007年の能登半島地震との間に “割れ残り”が存在しています。近い将来(といっても10年後、20年後かもしれません)、この割れ残りの部分でマグニチ ュード7程度の地震が発生する可能性が残されています。
この割れ残りの領域に、政府・地震調査委員会のデータでは明示的な活断層は存在していません が、これは活断層が存在しないという事ではなく、未発見である可能性が高いと考えています。
これまでも内陸で被害地震が発生するたびに、「未知の活断層で発生」という報道がなされる事があり ました。最近では、2018年の北海道胆振東部地震(M6.7, 死者 43 名)や2005年の福岡県西方沖地 震(M7.0, 死者1名)、2004年の新潟県中越地震(M6.8, 死者 68 名)も未知の活断層で発生していた のです(いずれも地震発生後の調査で活断層の存在が確認されました)。
DuMA ニュースレター 2023年5月15日
震度4以上を記録した地震が頻発
防災的には震度が最も重要な防災上の情報ですが、DuMAでは震度の事はほとんど扱ってきませんでした。
地震予測を含めた地震学で最も重要なのはマグニチュードです。観測された震度が大きいという事はもちろんマグニチュードが大きい事も重要な要素ですが、それ以上に
1)震源が陸域にあり、浅い地震である、
2)震源地近くに震度観測点があるという事が大きいのです。
さらに震度計が設置されている場所の地盤にも震度は影響されます。地盤が悪いため、実際に周囲の震度観測点より必ず大きな震度が記録される観測点も存在します。
日本列島は1995年の阪神淡路大震災以降、地震観測網が劇的に進歩し、さらに震度計も開発され、現在は4,000点以上で震度が観測されています(気象庁のみならず防災科学技術研究所や地方公共団体も配備している)。そのため、最近は比較的小さな地震でも、たまたま近くに震度観測点が存在すると大きな震度が観測されるという事が起こるのです。これを震度インフレと呼んでいます。
5月5日の能登半島で震度6強の地震以降、震度4以上を観測した地震が続発しています。そのため、これらの地震発生に関係があるのではというネットニュース等もありますが、能登半島の地震も千葉県の地震も北海道・日高の地震もトカラ列島の地震もそれぞれが関係しているという事は、地震学的には考えられません。続発はあくまで偶然の産物と言う事になろうかと思います。この1~2年、陸域で比較的的地震活動が低調となっており、あくまでも日本列島における地震活動のゆらぎと考えるのが自然なのです。トカラ列島もこのところ、地震頻発地域となっています。
地下天気図®解析では、全国的に非常に深刻な異常は観測されておりません。(2023.5.15時点)
5月5日 石川県能登地方 震度6強 M6.5
5月5日 能登半島沖 震度5強 M5.8 震度6強の余震
5月5日 石川県能登地方 震度4 M4.5 震度6強の余震
5月6日 青森県東方沖 震度4 M5.5
5月9日 石川県能登地方 震度4 M4.9 震度6強の余震
5月10日 能登半島沖 震度4 M5.0 震度6強の余震
5月11日 千葉県南部 震度5強 M5.4
5月11日 日高地方南部 震度4 M5.4
5月13日 トカラ列島近海 震度5弱 M5.1 能登半島の地震活動続報
2020年12月以降、顕著な群発地震活動が能登半島先端、珠洲市を中心に発生しています。そのような状況で2023年5月5日にマグニチュード6.5という規模の地震が発生しました。この地震で震度6強が観測され大きなニュースとなりました。その後、かなり激しい雨が能登半島を襲い、まさに地震と豪雨の複合災害と言える状況になったのです。
次にお示しする図は能登半島周辺の5月1日以降の地震活動です。この図ではマグニチュード1.5以上のすべての地震を図示しています。
5月12日時点で、群発地震活動は基本的に減衰していますが、まだ元のレベルとは大きく異なっており、今後も地震活動が継続する事が予想されます。
次のリンクは5月5日から12日までの当該地域の一日ごとの地震発生のアニメーションです。
中部・近畿・中国・四国地方の地下天気図®
2023年4月10日のニュースレターに続き、中部地方から中国・四国地方にかけての地下天気図®解析です。この領域は東日本大震災の影響をあまり受けていない事から、過去20年ほどの地震データを解析に用いています。今週は5月12日時点のMタイプ地下天気図®をお示しします。前回の地下天気図®とパターンはほとんど変化していない事がわかりました。
2023年5月5日に能登半島先端でマグニチュード6.5の地震が発生しましたが、過去20年というスパンでは、2007年3月に発生した能登半島地震(マグニチュード6.9)の影響が大きく、能登半島周辺には地震活動活発化も静穏化もこの地下天気図®では出現していません。能登半島地震は5日の地震のエネルギーの4倍の規模の地震であったため、相対的に最近の能登半島周辺の地震活動の活発化がはっきり見えていないのです。これは地下天気図®解析では、過去の近傍周辺の地震活動の平均(バックグラウンドの地震活動)を差し引いて解析しているためで、2007年の地震活動がバックグラウンドを引き上げているためです。
ちなみに2023年5月5日の地震は能登半島周辺の地震活動が2020年暮以降、活発化した後に2023年になって静穏化が開始した状態で発生していました。ただ地下天気図®で青く見えるほどの静穏化レベルではありませんでした。
以下に5月12日時点のMタイプ地下天気図®をお示しします。
DuMA ニュースレター 2023年5月22日
能登半島の地震活動続報
先週に引き続き、能登半島の地震活動に関する続報です。次にお示しする図は能登半島周辺の5月1日以降の地震活動です。この図ではマグニチュード1.5以上のすべての地震を図示しています。
5月19日時点で、今回のM6.5の地震に続く地震活動は基本的に減衰してきている事が確認できました。しかし元のレベルには戻っておらず、今後も地震活動が継続する事が予想されます。
DuMA ニュースレター 2023年6月5日
5月の地震活動概観
5月はメディアでも「最近地震が多い」というように報道された一ヶ月でした。実際、震度5弱以上を観測した地震が6回発生していました。震度5弱以上が6回となったのは、熊本地震が起きた2016年4月以来の事で極めて稀な一月であった事は確かです。特に5月5日には能登半島でマグニチュード6.5の地震が発生し、震源に近い石川県珠洲市で震度6強が観測されました。
メディアではマグニチュードより、まずは震度がニュースとなります。これは被害の程度が震度と直結しているため当然なのですが、例えば5月5日には能登半島沖でマグニチュード5.9の地震も発生し、最大震度5強を観測しました。それに対し、5月14日に八丈島近海で発生した地震は、同じくマグニチュード5.9の地震でしたが、最大震度は2となりました。これは八丈島近海の地震は、近海といっても八丈島の北西50kmほどの所で発生したため、近くに震度計が存在しなかった事が理由です(島が無いため、人もおらず震度計も存在しない)。
前回までのニュースレターで、「この所、大きな震度を観測する地震が多い」という事と「日本列島全域ではこの所の地震活動が活発化しているとは言えない」という主旨の事を述べましたが、最近地震活動が活発なのが人が住んでいる地域の近傍のため、大きな震度を観測する事が多くなっているのです。 能登半島の地震活動続報
前回に引き続き、能登半島の地震活動に関する続報です。次にお示しする図は能登半島周辺の5月1日以降6月2日までの地震活動です。この図ではマグニチュード1.5以上のすべての地震を図示しています。これまでに1685個の地震が観測されています。 注目すべき点は、5月30日頃から上図の青で示した能登半島の東方のこれまで地震が発生していなかった領域で、群発地震活動が開始した事です。群発地震活動は新たな段階に入った可能性があり、全く収束が見えない状況です。
● DuMAでは、ホームページのTop Pageで能登半島地震のリスクの注意を喚起してきました。
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