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地 震 お よ び 地 震 予 知 関 連 用 語 解 説

  • 予知と予測

 日本地震学会理事会[2012]は、2009 年イタリア・ラクイラの地震後に組織され

た市民保護のための国際地震予測委員会の報告書において、地震の予測については

(1)警報につながる確度の高いもの(deterministic prediction)と

(2)確率で表現され日常的に公表可能なもの(probabilistic forecast)を明確に区別していることを踏まえて、

  (1)を「地震予知」とすべきという合意が形成されている。

 

  • 長期とは

 地震調査研究推進本部地震調査委員会は、主要活断層帯の内陸地震の長期評価の中で30 年以内、50 年以内、100 年以内の地震の発生確率を、海溝型地震の長期評価の中で10 年以内、30 年以内、50 年以内の地震の発生確率を公表している。また、実用的地震予測に関する国際委員会報告[Jordan et al., 2011]では、数年から数十年を長期と呼ぶこととしている。

 

  • 中期とは

 実用的地震予測に関する国際委員会報告では、数か月から数年を中期と定義している。

 

  • 短期とは

 気象庁は、「地震が発生する直前(長くても数日程度)に行われる予知は、地震の直前予知(あるいは短期予知)と呼ばれます。」としています。また、実用的地震予測に関する国際委員会報告では、2~3か月以内を短期と呼ぶこととしている。

 

  • 直前とは

 気象庁は、「地震が発生する直前(長くても数日程度)に行われる予知は、地震の直前予知(あるいは短期予知)と呼ばれます。」としている[気象庁]。また、実用的地震予測に関する国際委員会報告では、短期のうち1週間程度以内のものを直前

と呼ぶ場合があるとしている。

 

  • 前駆すべり(前兆すべり)

 地震の前に生じると考えられている震源核形成過程(※1)により、震源断層域内の一部が少しずつすべり始める現象。

「プレスリップ」または「前兆すべり」とも呼ばれ、気象庁では東海地震予知情報業務の説明に「前兆すべり」を用いている。

 

※1 震源核形成

 地震は、地下の断層で破壊を伴ってすべり領域が急速的に進展していく現象である。理論的には、弾性体(※2)中で破壊が止まらずに進展するためには、破壊が進展することによって解放される弾性エネルギーが、破壊が進展する(新たに破壊面を作る)のに必要なエネルギー(破壊エネルギー)よりも大きくなる必要がある。このため地震の発生前には、震源断層域内の一

部で局所的にゆっくりとしたすべりが発生して徐々に進行し、すべりが破壊エネルギーより大きい場合に自発的に加速を始めて地震の発生に至ると考えられる。この局所的なゆっくりとしたすべりの発生領域を震源核と呼んでいる。

 

  • ひずみ(strain)

 物体に力を加えた時に生じる変形のこと。地殻のひずみは、大きさを表す量(長さ又は面積、体積)について、単位量あたりの変化量の単位量に対する割合として測定される。つまり次元をもたない。例えば、体積ひずみ計は単位体積当たりの体積変化を、単位体積に対する割合として測定している。

 

  • GNSS

 GPS(アメリカ)、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)、準天頂衛星(QZSS、日本)等の測位衛星システムを総称してGNSS(Global Navigation Satellite System / 全世界的衛星測位システム)と呼んでいる。

 

  • 応力(stress)

 物体の内部に生じる力の大きさや作用方向を表現するために用いられる物理量。断層面など岩盤中の面を考えた時、その面に働く単位面積あたりの力を意味する。

 

  • マグニチュード(M)

 断層のずれの規模を表す指標で、ずれ動いた部分の面積とずれの量の平均、剛性率(弾性の程度を表す指標の一つで、ずれによって周囲の岩盤に生じるひずみに対する応力変化の割合を表す係数)の積で表される地震モーメントをもとに計算される。モーメントマグニチュードを用いることで、地震の規模だけでなく、ゆっくりすべり等による断層のずれの規模も同じ指標で表すことができる。

 

  • モーメントマグニチュード(Mw)

 金森博雄により1979年に提唱された、新しいマグニチュードの概念。

それまで にいくつも提案されたマグニチュードでは、巨大地震になれば なるほど、実際 のエネルギーより過小評価される傾向があった。金森はマグニチュードを断層面 の大きさとずれの量で定義する事を提唱し、ある大きさで飽和する事がなく、 現在では、巨大地震のマグニチュードはモーメントマグニチュードを使って表現する事が共通認識となっている。

 

  • 気象庁マグニチュード(Mjma または Mj)

 気象庁が独自に定義したマグニチュード。1923年まで遡って一貫した方法で決 定されており、モーメントマグニチュードともM7クラスまで はよく一致している。ニュースなどで発表されるのはこの気象庁マグニチュードである。

 

  • 国際測地学・地球物理学連合(IUGG)

 “The International Union of Geodesy and Geophysics”の和訳及び略称。測地学と地球物理学に関する非営利の国際的な学術団体であり、日本学術会議が正式に認知した国際組織。(IUGG ホームページ: http://www.iugg.org/

 

  • 地球潮汐

 地球の固体部分は、月や太陽などの天体から受ける引力が地球の表面や内部で場所によって異なることにより変形する。このため、地球の自転や月の公転などによる天体との位置関係の変化を受けて、潮の満ち引きと同じように、地球の固体部分も周期的に変形(伸び、縮み)している。この周期的な変動を地球潮汐と呼ぶ。日本周辺では固体地球も上下に毎日20cmほど地球の中心からの距離が変化する事が知られている。

 

  • b値

 規模の小さい地震は大きいものよりも発生数が多いという地震の規模別頻度の性質を表すグーテンベルク・リヒター則※のパラメータ。b値は1 程度の値を取ることが多く、b=1 の時、グーテンベルク・リヒター則は、マグニチュードが1 大きくなると地震の発生数が10 分の1 となることを表す。また、b値が小さいほど地震の総数に占める大きな地震の割合が大きい。これまでの知見で、前震ではb値が小さい事が経験的にも知られており、実際東日本大震災前の3月9日から発生した地震はb値が通常の地震活動よりかなり小さかった。

 

  • グーテンベルク・リヒター則

 マグニチュードM以上の地震の発生数N(M)は、a、bをパラメータとして、以下の式で表される。

log N(M)= a ー bM

 この関係は、様々な地震活動についてほぼ成り立つことが経験的に知られている。

 

  • LAIカップリング

(Lithosphere-Atmosphere-Ionosphere Coupling: 地殻—大気圏—電離圏結合)

  LAIカップリングは地震あるいは地震前兆が地殻(地面の中、岩石圏、地圏)地圏(地面の中)だけの現象ではなく、広く大気圏や電離圏まで影響を与えている可能性がある事から提唱された。その後、地震時の現象だけでなく、たとえば津波による海面の変動により、大気が押し上げられ、さらにそれが電離層にまで伝わる現象や、隕石が地球に落下する時に、電離層に大きな穴(電子を消滅させる)が開き、さらに大気圏で衝撃波を生じ、それが地面に影響を与え地震計を揺らす現象も広くLAIカップリングと呼ばれる事となった。

 地球の半径は約6300kmであるが、殆どの地震は深さ100km程度までで発生している。いわば地震は極めて地球の表面近くの現象なのである。さらに電離層も高度80km位から始まり、その間に大気が存在する。いずれも極めて地球の表面近くに位置しており、電離層は地表を写す鏡とも言えるのである。

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